【医師が解説】妊娠超初期って?

 ネット上には様々な情報が交錯していますが、医師の目から見ると「なんだこれは?」という不思議な用語が使われていたり、明らかに間違った情報が出ていることもあります。以前から、医学的監修を依頼される案件の中で「妊娠超初期について」というテーマのものを何度か見かけていたため「妊娠超初期」で検索したら、わんさか同じような間違った情報がヒットしました。

 まず、大前提として「妊娠超初期」という用語は医学的には間違っています。妊娠0週0日~4週0日までを「超」初期と定義しているようですが、そもそも0週0日って月経初日のことですよ?月経中や排卵期に「妊娠」という呼び方をすること自体がおかしいのは分かりますよね?

 わかりやすくするために、生理の周期が28日の場合に限定して説明しますと、月経初日を0週0日と数えて、「妊娠が成立していることが分かってから」今日が何週何日ですとカウントします。通常の妊娠検査薬は、3週5日くらいでうっすら陽性が出ます。月経予定日が4週0日ですから「そろそろ生理が来るはずなんだけど来ないな~」というタイミングで調べれば、排卵日がずれていなければ陽性が出ます。なので、妊娠週数のカウントは、どんなに早くても4週0日から、多少フライングで妊娠反応が確認できたとしても3週5日くらいからになるのです。

 それを、さかのぼって「妊娠2週0日」というようにカウントすることは間違っています。2週0日は排卵日です。たとえその排卵で受精が成立してもまだ「妊娠」はしていません。受精卵が着床して、それが妊娠組織として無事に育って初めて「妊娠が成立した」と言えるのです。受精してから約1週間後が着床なので3週0日という時期はやっと着床したかどうかというタイミングです。この時期でも、まだ「妊娠」という用語を使うにはふさわしくありません。

 あえて、妊娠「超」初期と呼ぶなら、妊娠反応が陽性で出てから超音波検査で子宮内に胎嚢が確認できるまでの、3週5日くらいから4週5日くらいの約1週間の時期になるでしょう。妊娠反応が陽性で出た時点で、体のどこかに妊娠組織があるということは確実です。ですから、「妊娠」の状態ではあるのです。

 ただ、まだ超音波検査という「画像」での診断ができないため、妊娠しているけれどはっきり確認できていないごく初期、と言えます。

 妊娠を希望している方にとっては、排卵後から次の月経まで、つまり妊娠反応が確認できるまでの時期は、とてもドキドキする時期だと思います。だから、「妊娠しているかもしれない徴候」をネットで集めてしまう気持ちはよくわかります。

 基礎体温をつけていれば、高温期が2週間続いていれば妊娠の可能性が高くなりますので、その時点で妊娠反応を確認するといいでしょう。でも、例えば胸がいつも以上に張るとか、においに敏感になるとか、吐き気やめまいがするといった症状は、妊娠の兆候なのか月経前症候群の症状なのかは厳密な意味で判別は不可能です。私も、1人目を妊娠した時は、妊娠反応が出る1週間くらい前から異常な胸の張りがありましたが、2人目の時は全くそのような症状もなく、「今日が生理予定日なんだけどな~」と思って検査をしたら陽性でした。なので、身体症状をあてにするのはあまりお勧めできません。

 排卵後は、赤ちゃんが産まれたらどんなことをしてあげたいか、どんな風に自分の愛情を表現してあげたいかをゆったりイメージしながら2週間過ごす方が、ネット情報や基礎体温とにらめっこしているよりも、未来の赤ちゃんはやってきやすいと思いますよ。あまり不確実なネット情報に振り回されず、赤ちゃんの立場に立って妊活をしてみてくださいね。