妊娠前に性感染症検査が必要なワケ

  今日は子どもたちを夫に託して、女性医療ネットワークの理事会と学会に参加してきました。学会は、主に不妊治療に関する内容のものですが、私が受講してきたセクションは最近の感染症の動向についてです。
 2013年ごろから、若い方の間で梅毒が急増しているということが指摘されていましたが、実際の統計データを見ると一目瞭然。数年前まで年間1000件に満たなかった梅毒と「診断された人」の数が、昨年1年間では4518例にも増えているのです。しかも、梅毒の症状は多彩で、初期症状が出てもしばらくすると消えてしまうため、梅毒に感染しているけれどきちんと診断されていない人はもっと多いのではないかと推察されます。
 男性では40~44歳が感染のピークですが、女性は20~24歳がピークで、感染者数全体の3割を占めていました。

 クラミジアや性器ヘルペスなど、他の感染症もだいたい20~24歳をピークに「若い女性」に多い傾向にあります。「若い女性に多い」ということが何を意味するかお分かりでしょうか?「これから妊娠する可能性が高い人が多く感染している」ということです。
 クラミジアによる炎症は不妊症や異所性妊娠(子宮外妊娠)の原因になります。また、分娩時にクラミジアにかかっていると、産道を通ってくる時に赤ちゃんにクラミジアが感染して結膜炎や肺炎を引き起こします。
 妊娠中に、胎盤を通じて梅毒が赤ちゃんにうつると「先天性梅毒」になってしまいます。妊婦さんが梅毒に感染していた場合の、赤ちゃんの死亡率は4%・奇形率は14%ですから、何も感染していない場合と比べて様々なリスクが上がってしまうのです。

 このように、「これから妊娠する可能性がある年齢」の方の性感染症は「自分一人の問題ではない」ことになります。妊娠を希望するまでは、コンドームの使用を徹底し、妊娠前には一通りの感染症の検査を受ける必要があるのです。「受けたほうがよい」ではなく、本当は「受けておくべき」なんですね。
 クラミジア・淋菌・トリコモナスはおりもののをぬぐう検査で調べられます。梅毒やB型肝炎・C型肝炎やHIVは血液を採る検査で調べられます。梅毒やHIVは保健所でも検査を受けられますので、費用的に負担を少なくしたい場合は保健所での検査を活用するといいでしょう。クリニックでも、一通りの感染症の検査や、風疹交代を含めて妊娠前にチェックしておいたほうがよい検査をセットで行っています。ご希望の方はお電話でお問い合わせくださいませ。
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