女性アスリートの生理痛や生理不順【横浜のスポーツドクター】

アスリートやダンサーやバレリーナに多い生理の不調

10代の頃は、ホルモンバランスがまだ整っていなかったり、骨盤内の臓器が成長途中であることから、生理不順や生理痛などで悩む方は比較的多くいらっしゃいます。

運動習慣の有無と生理痛のつらさは、医学的にはあまり関連はなく、ハードな運動をしているアスリートやバレリーナの方でも、生理が重いという方は少なくないのです。

また、トレーニングがハードすぎたり、体重や体脂肪率が少なすぎると、ホルモンのバランスは乱れやすくなります。特に、体重を気にする必要がある競技をされている方や、見た目を気にするいわゆる「審美系」の競技をされている方は、たとえ体重がそこまで少なすぎる状態ではなくても「利用可能なカロリー」が不足しているために生理が止まってしまうことがあります。

 

なぜカロリー不足で生理が止まるのか?

体重が少なすぎるために生理が止まることを、医学的には「体重減少性無月経」と言います。

医学的には、BMI(体重kgを身長mの二乗で割ったもの)が17.5を下回ると「痩せすぎである」と判断します。BMIが16を下回ると、生理だけではなく体の他の機能もうまく働けなくなる可能性があると認識します。

体重が減る、または少なすぎるということは、消費しているカロリーに対して、摂取しているカロリーが足りないということです。

「カロリー不足」は、「脳」にとっては「このままの状態が続くと生命が危険にさらされるかもしれない」と感じてしまう「大問題」です。つまり、「どうにかして生命維持を優先しなければならない!!」という認識になります。

生理は、卵巣から「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」という二つのホルモンが出ることによって、子宮が反応して起きます。卵巣からホルモンが出るためには、「脳の司令塔=下垂体」から、「ホルモンを出しなさい」という命令が来なければいけません。

「今は生理を来させている場合じゃない!まず命を守らなければ!」と脳が認識してしまうと、卵巣に対しての命令を一時的に差し控えてしまうのです。そのため、卵巣もお休み状態となり生理が止まります。

 

生理が止まったままだと何が問題なのか?

10代の方や、特にスポーツやダンスをする方はの中には、「生理なんて来ない方が楽でいい」と思われる方もいらっしゃいます。

実際、大会や舞台に生理が当たってしまったり、練習の時にもナプキンの不快感や漏れを気にしながら過ごすより、全く生理が来ない方が表面上は楽でしょう。

生理が来ない状態が続いても、多くの場合、自覚症状として本人が「つらい」と感じる症状はほとんど出ません。かなり長期間ホルモン不足の状態が続いたり、二次的に甲状腺機能に支障が出ると、「疲れやすい」「冷えやすい」「便秘がち」「眠りが浅い」などの不調が出てくることがあります。

自覚的につらくないので、「このままでいいや」と思ってしまうかもしれませんが、生理が止まっているということは、この時期に体内になければならない女性ホルモンが「ほとんどない」という状態にさらされています。

女性ホルモンは、ただ生理を来させるだけではなく、骨を作ったり、血管をしなやかにしたり、脳の働きを助けたり、精神状態を安定させたり…とても多くの役割を持っています。

特に、10代後半は、「一生涯の骨の丈夫さ」を決める重要な時期になります。だいたい20歳くらいまでに骨を作り、一生のうち最も骨が丈夫な時が20歳くらいになります。これを「最大骨量」と言います。

一番骨を作る時に、生理が止まっていると、骨を作るために必要な女性ホルモンがありませんので骨が作られません。そのまま20歳を迎えると、「若いのに骨密度が低い」という状態になります。

例えば、無月経を放置して、ずっと女性ホルモン不足の状態が続いたせいで、正常に生理がある人より骨密度が20%低くなってしまったら、閉経後に10%骨密度が下がっただけで骨折リスクがとても高い状態になってしまうのです。

実際、マラソンの選手で、減量の影響で生理が止まったのに、放置して鍼知り続けていたら、疲労骨折を何度も繰り返してしまい、最終的には競技人生をあきらめざるを得なかった、というケースもあります。

「生理が来ない」という状態が3か月以上続いたら、すぐに婦人科を受診しましょう。

 

「体重を増やせ」と言われるのが嫌な人へ

体重減少性無月経の方が受診なさると、ほとんどの医師は「まず体重を増やしましょう」と言います。医学的には、それが最も重要だからです。

でも、競技のために、あるいは舞台のために、あるいはコンクールのために、頑張って減らした体重を戻せと言われても、それを受け入れがたいと思われる方もいらっしゃいます。

目の前の成果しか見えていない場合、どうしても「体重を増やしましょう」というアドバイスは、聞き入れがたくなるかもしれません。

医学的に大事なことは、「体重を増やす」ことよりも、「体が正常に機能して、やりたい競技が長く続けられるために必要な栄養とカロリーを摂取する」ことです。

いくら体重を増やすことが必要だからと言って、トーで立つバレリーナさんがBMI22になったら、今度は関節への負荷が大きくなりすぎるかもしれません。

 

どのような競技なのか、「今」適切な体重はどのくらいで、医学的に許容できる体重はどのくらいで、どうすれば必要なカロリーは摂りつつ、適した体重にコントロールできるのか?

そして、パフォーマンスと生理のバランスのとり方は、どうすればいいのかをご相談していくのが、婦人科医による女性アスリートサポートです。

アスリートの方だけではなく、ダンス・バレエ・新体操・チアを頑張っている方を応援させていただいております。お気軽にご相談ください。