女性の平均寿命と健康寿命
日本の女性の平均寿命はご存知の通り86.3歳で世界一ですが、実は「健康寿命」は73.6歳と意外に短いんです。健康寿命というのは、寝たきりにならずに健康に過ごせている年齢のリミットです。平均寿命と健康寿命の差は、寝たきりなど「健康ではない状態」で過ごしている期間です。
つまり、女性は約13年の「寝たきり期間」があると言ってもよいでしょう。いくら寿命が長くなっても、最後まで人生を謳歌できる状態で年齢を重ねられなければ意味がありません。
女性の寝たきりの原因となりうるのが、骨折と脳血管疾患です。なので、女性の健康寿命を延ばすには、骨粗鬆症と動脈硬化の予防がとっても重要になってくるのです。
いずれも、まだ異常が出る前、つまり骨密度が下がる前や動脈硬化が起きる前に予防していくことがとても重要です。
女性の場合、骨密度の低下も動脈硬化の進行も、女性ホルモンが働いている間はホルモンの恩恵である程度防ぐことができています。なので、閉経前はそれ程急激に骨密度が下がったり動脈硬化が進んだりはしません。
ところが、閉経したとたんに一気にそれらの異常が進んでしまうのです。
骨密度がある程度下がってしまうと、それ以降に骨粗しょう症に対するお薬を使っても改善するレベルに限界ができてしまいます。つまり骨密度が下がり始める前に治療を開始する必要があります。
また、動脈硬化の原因となる脂質代謝異常、つまりコレステロールや中性脂肪が高くなるといった異常も、脂質の数値自体は薬を飲んで下げることができますが、いったん血管に動脈硬化の変化が起きてしまってからでは、それを改善するのが難しくなります。
要するに、異常が出てから、閉経してから、治療を開始するのではなく、異常が出る前の「リスクがそろそろ高くなる」年齢にさしかかったら、それらを予防するための生活改善・食事の改善・投薬治療を開始しなければ、「健康寿命」は伸ばせないのです。
骨粗しょう症予防にビタミンDの補給や運動を心がける、脂質代謝異常の予防にカロリーの摂り過ぎ・脂質の摂り過ぎを避けて定期的な運動を行う、といったことは40代に入ったら心がけておくべきでしょう。もっと言えば、密度の低下は、10~20代の頃のダイエットが原因でも起きてきますので、若い頃から食事と体重のコントロールは必要なのです。
また、閉経が近づく40代後半にさしかかったら、積極的にホルモン補充療法を開始した方がよいと言えます。
女性ホルモンが骨密度低下や脂質代謝異常を予防することは、多くのデータで証明されています。また、開始の時期が遅いほど副作用のリスクが上がり、予防的効果が期待しにくくなるということも指摘されています
なので、ホルモン補充療法を開始するタイミングは、閉経してからではなく、閉経が近づいて「そろそろ更年期の症状が出てきたかも」くらいのタイミングで始めた方が、多くのメリットを得られるのです。
日本人は「薬」特に「ホルモン剤」に対する抵抗感がまだまだ強く、何も不調がないのに予防的にホルモン剤を使うといった認識は薄い人の方が多いでしょう。でも、女性ホルモンを上手に「活用」することによって、明らかに健康寿命が延びるわけですから、ホルモン剤が禁忌の方や副作用のリスクが高い方以外は、もっと気軽にホルモン治療を活用していただきたいなと思います。
もちろん、薬に頼らず食事や運動で健康寿命を延ばしていきたいという方は、女性ホルモンの恩恵がなくても健康が維持できる食事や生活習慣を身に着けていきましょう。