婦人科の病気
カンジダ腟炎の原因と治療法
カンジダ腟炎の原因は、体力の低下や免疫力の低下・妊娠・抗生物質の服用などです。風邪や膀胱炎の治療のために抗生物質を飲んだら数日後にカンジダ腟炎になった、というのはよくあるケースですが、これは飲んだ抗生物質で腟内の善玉菌まで除菌されてしまうために、本来は増えないはずのカンジダが異常増殖して引き起こされるのです。
カンジダは普通に空気中にも存在するカビなので、誰かからうつるという類のものではありません。自分がカンジダ腟炎になっていても、相手にうつしてしまうという心配もほとんどありません。
ただし、カンジダ腟炎になっているときは、外陰部も腟内もただれて非常にデリケートになっていますから、完治するまでは性交渉は控えた方が無難です。
非常に稀に、性交渉をするたびにカンジダ腟炎になってしまうという人がいます。この場合、相手の男性が抗真菌薬の塗り薬を使うことで改善することもあります。
カンジダ腟炎を予防するには、まずカビが増えやすい状態を作らないことです。湿気の多い場所はカンジダにとっては「居心地のいい場所」ですから、綿100%の通気性のいい下着を着ける・厚手のデニムやガードルははかない・おりものシートは使わない・ナプキンやタンポンはこまめに換えるといったことを心がけて、蒸れを防ぎましょう。
また、自分自身の抵抗力が落ちると、カンジダのような弱い真菌でも増えやすくなってしまいます。疲れやストレスをためない・体を冷やさないなど、免疫力アップに努めましょう。糖尿病の人はカンジダになりやすいのですが、血糖値が高いと雑菌は繁殖しやすくなります。なので、甘い物の摂りすぎにも注意が必要です。
ティーツリーというアロマオイルには殺菌作用がありますから、薄めてタンポンにしみこませたり、外陰部にアロマクリームを塗ったりして上手に活用してみるといいでしょう。
日付:2010年4月29日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
生理痛の原因
月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの明らかな原因となる病気がはっきりしている「器質性月経困難症」と、はっきりとした原因は分からないけれどとにかく痛いという「機能性月経困難症」に分けられます。
器質性月経困難症の原因で最も多いのは、やはり子宮内膜症ですね。元々月経痛がひどい人や、だんだん痛みがひどくなる人は、内膜症がないかどうかはきちんと検査してもらっておいた方がいいですよ。内膜症の中でも子宮腺筋症といって、子宮の壁が内膜症の病変によって分厚い状態になっている人は月経痛がひどく出血量も多くなりやすいんです。
器質性月経困難症の原因となりうる病気は、内膜症以外にもいくつかあります。子宮のお部屋の中に出っ張るタイプの子宮筋腫=粘膜下筋腫は、月経のたびにこの筋腫を押し出すように子宮がギュッと強く収縮するので強い痛みの原因になることがあります。出血量も増えやすいので、余計に痛みが強くなりやすいんですよ。
数はあまり多くありませんが、双角子宮や重複子宮のような「子宮奇形」の場合も、血液がスムーズに出にくいために痛みが強くなりやすかったりします。
子宮後屈は病気ではありませんが、子宮の位置が後ろに強く傾きすぎていると、やはり血液がスムーズに排出されにくくなって強い痛みを伴うこともあります。
月経困難症の人の多くは、検査をしても何も異常が見つからない「機能性月経困難症」です。中にはごく初期の子宮内膜症で、普通の検査でははっきりと分からないだけという場合もありますが、何も病気がないけれどいたいという人の方が圧倒的に多いんですよ。
病気がないのになぜ痛みが強くなる人がいるんでしょう?様々な説がありますが、1つは前回お話しました痛みの伝達物質「プロスタグランジン」が多く出てしまうせいだと言われています。子宮内膜が人より分厚くなりやすい人は、その分出てくるプロスタグランジンも多くなってしまうので、強い痛みが出ている可能性があります。
また、月経の時期は多かれ少なかれ、子宮の周りに血液が滞ってしまうんですが(これを医学的には「うっ血)といいます)、元々冷え性だったり血液の流れが悪い人の場合、月経時期のうっ血がひどくなって下腹や腰が重くなりやすいんですね。
それ以外にも、特に若い方の月経困難症は、子宮がまだ未熟で細長いために月経血がスムーズに出にくくて、子宮が無理やり血液を押し出そうとするせいで痛みがひどくなっている可能性もあります。年齢とともに月経痛が軽くなったり、お産をすると痛みが軽くなったりすることがあるのは、月経血の通り道が広がるからなんです。
機能性月経困難症になりやすい人は、タバコを吸っていたり、冷え性だったり、不規則な生活をしていることが多いんですが、これらは全て血液の流れを悪くしてしまうので改善する必要があります。
特に、タバコは血管を収縮させて血液をドロドロにしてしまうので、血液の流れは非常に悪くなってしまいますからね。タバコは百害あって一利なし!タバコを吸っている人は、どんな治療よりもまず先にしっかり禁煙するように心がけましょう。
日付:2010年4月26日 カテゴリー:婦人科の病気,生理痛
生理痛の治療
月経困難症の治療は、薬による治療と手術による治療に大きく分けられます。
はっきりとした原因がなくて痛い場合や、原因となっている病気に対して手術などの積極的な治療を行わない場合は、治療の目的は「痛みを軽くすること」。つまり、生活改善を行ったり薬を上手に活用して痛みを和らげていくわけです。
どんな病気にも言えることですが、まず大事なのは生活改善なんですね。ストレスをためない・良質な睡眠をとる・体に害のある食品を口にしない・体を冷やさない・・・こういった日々の積み重ねを無視してどんな治療を行っても根本的な解決にはなりません。
特に、女性にとって大敵の「冷え」を改善することは生理痛だけでなくあらゆる婦人科の病気の改善につながると思っていいでしょう。体の内部を冷やさないためには、薄着をしない・毎日寝る前にきちんと湯船につかる・冷たい飲み物や体を冷やす食品を摂り過ぎない・発酵食品や精製していない食品を食べる・定期的に運動をするといったことを心がけるといいですよ。生理痛はあるけれどそこまでひどくないという人は、生活改善だけで痛み止めが必要なくなってしまうこともあります。
手っ取り早く痛みを抑える方法は、痛み止めを「早めに」飲むことです。「早め」というのは、しっかり痛みが出てしまってからでは痛み止めの効果が充分に発揮されないから。「ちょっと痛いかな~」くらいの時に早めに1錠飲んでしまえば、その後何度も追加で飲まなくてもすむことが多いんですよ。
痛みをギリギリまで我慢してから痛み止めを飲むと、すでに痛みの伝達物資が大量に放出された後なので焼け石に水ということになってしまいます。ただし、痛み止めはあくまで痛みを「抑えている」だけの対症療法に過ぎません。根本的な治療ではないということを分かった上で上手に活用してくださいね。
体質的に冷えや血行不良がある人は、体を温めたり血液の流れを良くするような漢方が有効なこともあります。婦人科でよく使うのは、「当帰芍薬散」や「桂枝茯苓丸」などですね。
これらの漢方は滞った悪い血を押し流してくれる働きがあるんです。これらと、子宮の収縮を和らげるような漢方を組み合わせて痛みをコントロールしていくこともあります。
日付:2010年4月26日 カテゴリー:婦人科の病気,生理痛
おりものの異常の見分け方
おりものとは?
おりものは、腟や子宮の出口で作られる分泌物が混ざったものです。腟内に潤いを保ち、雑菌が入ってきたり増えたりするのを防ぐ働きを持っています。口の中の唾液や目にとっての涙と同じようなものです。
おりものの中には、デーテルライン桿菌という「善玉菌」がいて、大腸菌やカンジダ真菌などの雑菌が増えないように働いています。この善玉菌が少なくなったりいなくなったりすると、腟内の抵抗力が落ちて感染を起こしやすくなってしまいます。
よく、抗生物質を飲むとカンジダ腟炎になる方がいらっしゃいますが、これは、抗生物質によって一時的に善玉菌まで除菌されてしまうためです。カンジダはカビの一種で抗生物質は効きませんから、善玉菌によるバリアがなくなると増えやすくなるのです。
また、おりものを気にしすぎるあまり、トイレに行くたびにビデで洗ってしまう方がいらっしゃるようですが、これは善玉菌まで洗い流してしまうので返って感染を起こしやすくしてしまいます。ビデを使うのは月経の時期だけにして、洗いすぎないように気をつけましょう。
健康なときもおりものは多少出ます
婦人科を受診なさるきっかけで「月経不順」や「不正出血」と並んで多いのが「おりものが気になる」という訴えです。でも、実際拝見すると、本当に異常なおりものが出ている方はそれほど多くなく、ほとんどのケースが「気にしすぎ」です。
正常なおりものは、半透明~白っぽい色で卵白のように少し粘り気があります。乾くと、少しポソポソしたクリーム色の状態になることがありますが、これは異常ではありません。月経直後は臭いが強めのこともありますが、それ以外の時期はあまり臭いがないのが普通です。おりものシートをつけっぱなしたり、タンポンを入れっぱなしたりすると雑菌が増えるため臭いが強くなることがあります。
おりものの量は個人差があり
おりものはホルモンの影響を受けて状態や量が変わるので、排卵期や月経直前はおりものが増えた感じになります。おりものの量も汗と同じように個人差があるので、ちょっと多めだなと思っても多少下着につく程度の量はあまり気にする必要はありません。
たまに「ずっとおりものシートをつけていないと染み出てきてしまうんです」という人がいますが、感染がないことを確認できていれば無理に治療をする必要はありません。ただ、おりものシートを常用していることがおりものを増やす原因になっていることはあるので、シートをつけっぱなしにするのはやめましょう。
排卵期や月経前は、病気でなくてもおりものの量が一時的に増えます。それ以外に、感染があったり、腟内に異物があったりすると量が増えます。おりものがずっと多いなと思ったら一度はきちんと検査を受けた方がいいでしょう。
ただし、「おりものが増えていない=病気ではない」とは言い切れませんから、おりものの「量」だけで異常の有無を判断することはできません。
日付:2010年4月21日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
病気が疑われるおりものの異常
病気が疑われるおりものは?
おりものの状態だけで病気の有無を判断することはできませんから、気になったらまずは病院で検査を受けることが大事です。腟の中から直接おりものを取って調べるので、下着を取って内診台に上がる必要があります。検査自体は、綿棒でおりものをとるだけなので痛みもなく数秒で終わります。
ただ、結果が出るまでには数日~1週間程度かかることがほとんどですから、たいていはまず検査だけをして1~2週間後に結果を聞きに行き、異常があれば薬を処方してもらうといった流れが一般的です。ただし、おりものを見ただけで明らかに病気が疑わしい時は、検査結果を待たずに薬が出されることもあります。
検査代金は何の検査をするかによって異なりますが、クラミジア・淋菌・一般の雑菌をひと通り調べると初診料を含めて8000~10000円くらいになります。症状があれば保険がききますから、保険証を使えば実際支払うのは2500~3000円ですむはずです。
一緒に子宮癌の検査をしたりすることもありますから、余裕を持って5000円~8000円くらい持っていれば安心でしょう。
病気が疑われるおりものの状態は次のようなものがあります。
*おりものの中に血液が混ざる(ピンク色や茶色のおりもの)
不正出血のサインです。子宮癌やクラミジア頚管炎・子宮頚管ポリープなどの可能性があります。
いったん治まっても必ず婦人科で検査を受けましょう。
*水っぽいおりものが流れ出るくらい多い
クラミジア頚管炎の可能性があります。性交渉は控えて早めに検査を受けましょう。クラミジアはひどくなると熱が出たり下腹全体が痛くなったりすることがあります。
抗生物質を1~2週間飲めば治療は可能ですが、卵管にまで炎症が広がると不妊症の原因になります。
*くすんだ黄緑色の鼻水のようなおりものが出る
淋菌感染症や、大腸菌などの雑菌による細菌性腟炎の可能性があります。雑菌なら自然に治ることもありますが淋菌の場合は抗生物質の点滴でしっかり治療する必要があります。
雑菌でも腟内に抗生物質のタブレットを入れることで殺菌できます。
*ヨーグルト状のポソポソしたおりものが多くて痒みがある
カンジダ腟炎が疑われます。自然に治ることもありますが、何度も繰り返したり痒みがひどい場合は受診しましょう。
*魚の腐ったようなツンとした臭いが強い
雑菌が増えていたり腟内に異物が入っている可能性があります。2~3日様子を見て改善しないようなら早めに受診した方がいいでしょう。
雑菌の場合、1週間ほど腟内に抗生物質のタブレットを入れることで改善が期待できます。
*クリーム色の泡立ったようなおりものが出て強い痒みがある
トリコモナス腟炎が疑われます。性交渉を控えて早めに検査を受ける必要があります。
飲み薬と膣内に入れるタブレットを10日ほど使えば治療できます。
これらの症状がある時は、基本的に病院で検査してもらいましょう。特に、血液が混ざっている場合は、癌の可能性もありますから注意が必要です。
病気の種類によっては、おりものの異常だけでなく、痒みや下腹部の痛みをともなうこともあります。おりもの以外の症状がある場合は、自己判断で様子を見たりせずに受診した方がいいと思ってください。
日付:2010年4月21日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
おりもの異常の予防法
おりもの異常を起こさないための予防策は?
最も大事なことは、妊娠を望んでいる時以外は必ずコンドームを正しく使うことです。たとえ夫婦間であってもパートナーが1人でも、そして妊娠中でも、コンドームは必須だと思ってください。それが、自分と相手の健康を守るための最低限のマナーです。
おりものを気にしすぎる方の中には、コンドームを使っていないためにちょっとしたことですぐに「性病ではないか」と不安になってしまうという方がいます。自分でよけいな不安を作り出さないように、日頃から安全なセックスを心がけてください。もちろん、セックスの前にシャワーを浴びてお互い清潔になっておくことは言うまでもありません。
また、特に妊娠中は抵抗力が落ちているので、ちょっとした雑菌にも感染しやすくなっています。おりものの中の雑菌が増えると、早産や破水の原因になってしまいますから絶対にコンドームは手放さないことが大事です。
コンドームを「避妊具」と思っている人は、「なぜ妊娠中にわざわざコンドームを使うの?」と思うかもしれませんが、そもそもコンドームは感染を予防するものなのです。
妊娠中でなくても、体力や抵抗力が落ちたり、腟内が蒸れた状態になると雑菌が増えやすくなってしまいます。湿気の多い場所は細菌にとっては「居心地のいい場所」ですから、綿100%の通気性のいい下着を着ける・厚手のデニムやガードルははかない・おりものシートは使わない・ナプキンやタンポンはこまめに換えるといったことを心がけて、蒸れを防ぎましょう。
腟内は元々じめじめしていて通気性が悪く、適度な温度が保たれているので、細菌が増えやすい条件がそろっています。おりものシートを使っていれば清潔が保てると思っている人も多いようですが、通気性の悪いシートを何時間もつけっぱなしにしていると返って雑菌が増えやすくなってしまうのです。どうしても下着の汚れが気になる場合は、綿100%の布製のシートを使うようにしましょう。
また、自分自身の免疫力が落ちると、普段は何の悪さもしない雑菌が増えやすくなってしまいます。疲れやストレスをためない・体を冷やさない・充分な睡眠をとるなど、日常生活の改善で免疫力アップに努めましょう。
糖分は細菌にとって栄養源ですから、血糖値が高いと雑菌が繁殖しやすくなります。なので、甘い物の摂りすぎにも注意が必要です。甘い物は体を冷やす作用もありますから、特に冷えやすい人はあまり摂らない方がいいでしょう。
日付:2010年4月21日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
卵巣のう腫や卵巣がんの症状
卵巣の腫れをまとめて「卵巣腫瘍」といいますが、悪性度つまり癌かそうじゃないかによって大きく3つに分けられます。
明らかな悪性腫瘍が「卵巣癌」、逆にはっきりと良性腫瘍だといえるものが「卵巣のう腫」、そして悪性と良性の間くらいの性質を持っている腫瘍が「境界悪性腫瘍」です。
いずれの場合も、卵巣が多少腫れている程度では全く症状が出ません。極端に大きくなれば、お腹の圧迫感などで気づくこともありますが、検診や他の症状で内科の診察を受けた時にたまたま発見されるケースのほうが多いんですよ。
お臍の高さを超えるくらいの大きさになると、さすがに下腹が圧迫されるので「何となくお腹が張る」「ウエストがきつい」といった症状を自覚することもありますが・・・中には20㎝くらいの腫瘍があるのに「単なるメタボだと思ってました」なんて、のんきな人もいらっしゃいます。
元々卵巣は「沈黙の臓器」と言われているほど症状が出にくい臓器です。正常な大きさが2~3cmなので多少腫れてもスペースに影響を与えにくく、しかも、子宮の両側にハンモックにつるされるような形でルーズに存在しているので、痛みも圧迫症状もあまり出ないんですね。
なので、卵巣がんは早期発見するのがとても難しく、見つかった時にはすでに進行癌であることがほとんどです。これが、卵巣がんが「サイレントキラー」といわれる所以なんです。早期発見するには、やはり、定期的に超音波検査を受けるしかありません。
卵巣が5~6cm以上に腫れると、卵巣を支えている靭帯ごとグルッと捻じれてしまうことがあります。卵巣のう腫の「捻転」と言って、この状態になると立っていられないほどの激痛が突然現れますので、たいていは救急受診してそのまま手術になります。
たまに、捻じれかかっては自然に元に戻るといった中途半端な「捻転」を繰り返す方もいらっしゃるようで、突然痛くなったりしばらくすると治まったりといった症状を繰り返します。こういった捻転を疑う症状がある場合は、例え良性腫瘍であっても早めに手術しておくことをお勧めします。
日付:2010年4月15日 カテゴリー:卵巣がん・卵巣のう腫,婦人科の病気
卵巣のう腫や卵巣がんの診断
卵巣腫瘍の診断は、主に超音波検査やMRIなどの画像検査で行います。悪性の可能性が高い場合は、腫瘍マーカーやCTや胃カメラ・大腸カメラなどの詳しい検査を合わせて行っていくこともありますね。
卵巣癌の中には「転移性」と言って、胃癌や大腸癌からの転移で卵巣が腫れることもあるので、消化管の検査が必要になってくるわけです。
ただし、最終的に悪性なのかどうかという「確定診断」は、卵巣のう腫そのものを病理の検査に出して顕微鏡で細胞を見てみなければつけることはできません。つまり、手術をするまでは良性なのか悪性なのかといった区別はつけられないんです。あくまで画像や腫瘍マーカーの値から、「悪性の可能性が低いか高いか」を予測しているに過ぎません。
超音波やMRIで明らかに良性腫瘍の見え方をしていて、腫瘍マーカーの数値も上がっていない場合は、急いで白黒つけなくてもいいので「様子を見ましょう」「いずれは手術をしましょう」と言われることが多いですね。
逆に、少しでも悪性を疑う所見があったり、腫瘍マーカーの数値が高かったりする場合は、万が一悪性だった場合のことを考えて出来るだけ早めに手術をするように勧められます。
超音波検査で「卵巣が腫れています」といわれた人は、悪性の可能性は低いのか、どういった種類の腫瘍が考えられるのか、いずれ手術が必要なのか、などを確認しておくといいでしょう。
日付:2010年4月15日 カテゴリー:卵巣がん・卵巣のう腫,婦人科の病気
子宮体がんの症状
「子宮がん」は、癌ができる場所によって「子宮頸がん」と「子宮体がん」に分けられています。ただできる場所が違うだけでなく、それぞれ発症しやすい年齢や原因や予防法が大きく異なってくるので、別々の病気として考える必要があるんですね。
子宮体がんは子宮のお部屋の中にできる癌で、「子宮内膜」という部分の細胞が癌になっていきます。子宮内膜は、妊娠時に着床のためのベッドとなる部分で、月経がある間は毎月ホルモンの影響を受けて分厚くなって月経として剥がれ落ちていきます。
毎月きちんと出血しない人や、閉経が近づいて月経が不規則になってきている人は、内膜がきちんと剥がれ落ちないで分厚いままになる事があります。これが、子宮体がんのリスクになることもあるので要注意です。
以前は子宮頸がんが主流で子宮体がんは少なかったのですが、食生活の欧米化や晩産化・未産率の上昇などのせいで、最近では子宮体がんが子宮がん全体のほぼ半分を占めるようになってきているんですよ。
好発年齢は40~50代の閉経前後。原因として一番大きく関係しているのは、女性ホルモンのバランスの変化です。卵巣から出ている2種類の女性ホルモンのうち「エストロゲン」は子宮内膜を分厚くする作用を持っていて、もう1つの「プロゲステロン」は内膜をはがして子宮の中をお掃除する作用を持っています。この「エストロゲン」が「プロゲステロン」よりも過剰に働いてしまうと、内膜の細胞が増えすぎて癌になりやすくなるんですよ。
子宮体癌のリスクが高い人は、
「妊娠・出産をしたことがない人」
「多嚢胞性卵巣症候群で月経不順の人」
「閉経が遅い人」
「乳がんのホルモン治療を受けている人」
「更年期の治療でホルモンを1種類のみ補っている人」
「肥満の人」などです。
子宮体がんの症状で最も多いのが「不正出血」です。特に閉経後の方で不正出血が続く場合は注意が必要ですね。他にも、おりものが増えるという症状で見つかる方もいらっしゃいます。
子宮体がんも、発見するには子宮体がん検診を受けるしかありません。子宮頸癌の検査と違って、子宮の奥の方まで細胞を擦り取る細い器具を入れなければいけないので、多少痛みを伴うのが難点なんですが、40歳以上でリスクが高い方や不正出血がある方はきちんと検査を受けておいた方がいいでしょう。
日付:2010年4月14日 カテゴリー:婦人科の病気,子宮体がん
子宮体がんの予防と治療
子宮体がんの予防法は、「適切な体重を保つ」「月経不順を放置しない」「脂肪の多い食事を摂らない」「低用量ピルを飲む」などです。
脂肪の取りすぎや肥満はすぐにでも改善できるはずですから、心当たりのある方は生活改善を心がけてください。
低用量ピルは、元々避妊のために開発された合成ホルモン剤ですが、子宮内膜を非常に薄く保つ働きがあるので、子宮体がんのリスクをかなり下げてくれるんですよ。低用量ピルを10年間飲むと子宮体がんのリスクは2割程度まで低くなるというデータもあります。特に、月経不順の人は子宮体がん予防のためにもピルで月経サイクルを整えておくことをお勧めします。
子宮体がん検診で「疑陽性」や「陽性」の結果が出た場合、さらに詳しく調べるために「内膜組織診」という検査を行います。
組織診の結果が「単純子宮内膜増殖症」であった場合は、そのまま定期検査で様子をみたり、それ以上病気が進まないようにピルで治療したりします。少し病変が進んで「複雑型異型内膜増殖症」という結果だった場合は、より詳しく調べるために、麻酔をかけて「子宮内膜全面掻爬」という手術を行います。子宮内膜を全部掻き出してわずかでも「がん細胞」が含まれていないかくまなく調べるわけです。
詳しい検査の結果が「複雑型異型内膜増殖症」だった場合、いわゆる「前癌状態」なので、お腹をあける手術をして子宮を摘出します。まだ「癌」にはなっていないので基本的に周りに広がったり転移したりはしていません。子宮を取るだけでほぼ完治が期待できます。稀に30代でもこの状態になることがありますが、ご本人が将来妊娠を希望している場合は子宮をとらずホルモン治療を行っていきます。
いずれかの検査で「子宮体がん」という結果が出た場合は、MRIなどで病気の広がり具合を確認してから、子宮や卵巣やリンパ節を取る手術を行います。子宮頸がんと同じく、病気の広がり具合によっては術後に放射線治療や抗癌剤による治療を追加することもあります。
日付:2010年4月14日 カテゴリー:婦人科の病気,子宮体がん