HPVワクチン
HPVワクチン最新情報
3医会合同講習会で仕入れてきた、HPVワクチンについての最新情報をお伝えしますね。
女子大生におけるHPV感染の追跡研究では1年以内で約15%・3年以内で約45%が陽性化するそうです。それらをさらに追跡すると、陰性化する頻度が6ヶ月で30%・12ヶ月で70%・24ヶ月で90%。つまり、過半数の女性が一生に一度は感染するけれど、2年以内に9割の人はHPVの検査が「陰性」になるってことです。
全女性の50~80%が感染するわけですから、演者の先生はHPV感染は子宮が風邪をひいたようなものだとおっしゃっていました。
一方で、若い頃からこのHPVに感染してしまう事は、20代30代で子宮頸がんが増えている事と明らかに関係しています。
HPVの検査をすると陽性率は15~19歳がピークで4割以上の人が陽性で出ます。年齢とともに徐々に陽性率は下がっていって、35~39歳以降で10%以下になるんです。
ただ、「検査で陰性になった」ことがイコールHPVが排除されたという事にはならないんだそうです。HPVは排除されるわけではなく、検査で引っかからない状態で潜伏し続けるらしいんですね。
だから、一度でもHPVにかかってしまったら、例え検査で陰性化しても子宮頸がんになるリスクが下がったと安心してはいけないとおっしゃってました。
この潜伏の状態だとウイルスも悪さはしませんので、子宮頸がんに細胞の変化が進んでいく事もありません。いつ潜伏状態からウイルスが目覚めるかが問題なだけなので、1年に1回の検診を受けていれば心配する必要はないんですね。
ただ、ウイルスがすでに潜伏しているという事は、感染後にワクチンを打っても効果が得られないかもしれないという事です。こういった、検査では「陰性」となってしまう潜伏感染は当然年齢とともに多くなっていきますから、ワクチンの効果も年齢とともに下がってしまいます。
30代や40代の方がワクチンを打っても害はありませんが、予防効果という意味でもあまり効果は期待できないとのことでした。
なので、30歳以上の方がワクチンを打ちたいとおっしゃったら、もしかしたら効果がないかもしれないことと必ず年に1回の子宮頸がん検診は必須である事をご理解いただいた上で接種することになるんですね。
ちなみに、最優先接種対象者は、性交経験がない女性です。
何歳であっても、性交経験がなければHPVに感染していないわけですから、ワクチンによって70%もの予防効果を期待できます。
海外では、10~12歳くらいで公費負担で接種している国が多くて、それ以降の年齢でも25歳くらいまでは優先的に接種する対象になっています。
また、子宮がん検診で軽い異常が出ていても、ハイリスクタイプのHPVに感染していても、コンジローマにかかった事があっても、10~20代であれば50%の予防効果は期待できるので、HPVの16型や18型に感染しているかどうかの検査はせずに、優先的に接種する事を勧めた方がよいとのことでした。
患者さんにもよく聞かれるのですが、「コンジローマにかかった事があったらワクチン打てないんですか?」とか「HPVの検査で陽性が出てしまったらワクチン打っても意味がないんですか?」という心配は必要ないという事です。
逆に、ワクチンによる予防効果があまり期待できないケースは、明らかに16型や18型に感染していることが分かっている人・すでに円錐切除を受けた人・40歳以上の人です。
同じ手術後でも、レーザー蒸散によって治療した後の人は、再発予防のためにワクチンは接種した方がいいとのことでした。
30歳以上の人については、ワクチンを打つよりも定期的な子宮がん検診をサボらない事の方が重要になってくるのですが、海外と比べて検診の受診率が約20%という低さの日本では、30代や40代でもワクチンを打った方がいいのではないかという考えもあるそうです。
いずれにしても自費なので、接種するかどうかは本人の希望次第なんですが、接種前のHPV検査は不要とはっきりおっしゃっていただけたので、ワクチン接種代以外はそれほどかからずすみそうですね。
1度HPVにかかったからワクチンは無理だわ~とか、レーザー蒸散した後だから意味がないかも、とあきらめていた方も、ワクチンの効果が期待できそうなので、担当の医師に相談してみるといいかもしれませんね。
日付:2010年5月20日 カテゴリー:HPVワクチン,女性検診