日々の雑記

「薬を使いたくない」場合の注意点

 クリニックの診療では、できるだけ患者様に「治療法についてご希望はありますか?」と伺うようにしています。もちろん、どうしても行った方がよい治療がある場合は、選択肢をお示しせずに「こうした方がよいですよ」とお伝えすることもあります。例えば、重度の貧血なのに何の治療もしたくないとおっしゃられても、それはご希望に沿うことはできません。逆に、選択の余地がある場合はできるだけご本人に治療方針を考えていただくようにしています。それは、ご本人が納得をして「自分で選んだ治療」を行う方が、副作用が出にくく治療効果が得やすいからです。

 標準的な治療以外にも、漢方・サプリメント・アロマなどの代替医療をお示しすることもありますし、患者様ご本人が鍼灸やヒーリングなどご自身の信じている代替医療を積極的に取り入れるケースもあります。
 いずれにしても、「薬は使いたくない」という方には、医学的に許容できる範囲でご希望の治療を行っていくようにしています。

 だたし、医学的に許容できない場合、例えば放置すれば命に関わる場合や標準的な治療を行えば安全に「完治」が目指せる場合などは、多少ご本人にご不満がありそうでも標準的な治療を強くお勧めします。それは、医師として「ベターと思われる道」をきちんとお示しすることも必要な役割だと思うからです。
 実際、子宮頸がんの初期段階でサプリメント治療のみを行ってしまい、手術不能な状態になって運び込まれて30代で亡くなられたケースや、子宮筋腫による過多月経をヒーリングとサプリメントで様子を見ているうちに重度の貧血になって(ヘモグロビンが正常の3分の1以下という状態でした)輸血が必要になってしまったケースなどを見てきました。
 そういったケースをみると、ここまでひどくならないうちにきちんとした治療を受けていれば・・・と思わずにはいられないのです。

 「薬を使わずに」治療をする、または経過観察をする場合は、以下の点に注意が必要です。

 一つは、定期検査を絶対にサボらないこと。標準的な治療を断ったからといって、医師との関係が切れるわけではありません。例え何の治療もせずに様子を見るのだとしても、医師から指定された間隔できちんと定期フォローは受ける必要があります。そして、万が一悪化していっている場合は、このまま様子を見ても大丈夫なのかをその都度相談していくことが大事です。

 もう一つは、「その病気であることを受け入れること」です。治療を拒否なさる患者様の中には、自分が病気であること自体を受け入れきれず拒否なさる方もいらっしゃいます。病気は体からの何らかのサインなので、病気であることを否定して目をそらし続けると病気はよくなってくれません。
 その病気がどのようなメッセージをもって自分のもとに「来てくれた」のかをきちんと考えて、病気を通して自分の体を向かい合ってあげる必要があるのです。そして、病気になった原因を見つけてそれを改善していかなければ、「今と同じこと」を続けていたら病気はそのまま進行していきます。

 病気と向かい合う場合のポイントの一つが、その異常を引き起こしている「感情」にフォーカスすることです。
 例えば、子宮筋腫は「怒り」をためている方に多く見受けられます。自分の中にある「怒り」が見つかったら、その怒りの裏側にある「悲しみ」を探してみるといいでしょう。そして、怒りを開放する方法や、悲しみを癒す方法を探ってみるのです。
 子宮内膜症は「癒着」を引き起こす病気です。固執や強すぎるこだわりがないか見直してみるのもいいでしょう。食べ物に偏りはないか、考え方に偏りはないかを見直してみると、治療法の選択の仕方そのものが「固執」からくるものだと気付かれることもあります。何かに固執しているということは何かを「否定」している可能性があります。つまり、自分自身の一部を受け入れられていない可能性があるということです。内膜症が「異所性」にできる病気であることと、自分の中に「異所性」を感じているまたは自分が「異所性」だと感じていることはリンクします。

 クリニックでは、このようなカウンセリングをゆっくり行う環境がまだ十分には整っていませんが、将来的には「薬を使いたくない」方用の代替医療センターを作れたらいいなと考えています。
 代替医療センターができるまでは、特殊外来であるカウンセリングやサプリメント外来を活用していただければ幸いです。

日付:2014年2月13日  カテゴリー:日々の雑記

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将来妊娠できるかどうかが心配?

 妊活ブームだったり、不妊症に関する情報が色々出ているせいか、「今妊娠を目指しているわけではないのだけど、将来妊娠できる体なのかどうか検査したい」というお問い合わせをいただくことがしばしばあります。自分は将来ちゃんと妊娠できるだろうか、という不安を何とか払拭したいというお気持ちは分かるのですが、残念ながら「将来妊娠できることを保証する検査」はないんですよね。 
 もちろん、妊娠を目指せば誰でもすぐに妊娠できるものだと安易に考えて何もケアをしないよりは、そうやって早い段階でご相談いただいた方が色々アドバイスさせていただくこともできますので、「妊娠できるかどうかのご相談」は大歓迎です。

 「妊娠できる体かどうか」を調べることはできませんが、「妊娠しにくくなる明らかな異常がないか」はある程度調べることができます。
 例えば超音波検査で子宮筋腫や子宮内膜症などの異常がないかを確認したり、クラミジアをはじめとした性感染症に感染していないかを確認したりといった検査です。特に月経不順がある場合は、ホルモンバランスに異常がないかを調べておいた方がいいでしょう。
 AMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査は、結果が正常だからと言って安心材料にはなりませんが、結果に異常があった場合にはライフプランの立て直しに有効と言えます。

 将来安心して妊娠を目指すためには、以下のことに注意して、「卵子の妊娠適齢期」の間に妊娠を目指せるような環境を整え、きちんとライフプランニングしていくことが大事なんだと思います。
  *妊娠を希望するまではピルで確実な避妊をする
  *妊娠を希望するまではどんな時も必ずコンドームを使用する
  *年に1回子宮頸がん検診と超音波検診を受ける
  *パートナーが変わったら性感染症検査を受ける
  *ファストフードやジャンクフードを食べない
  *バランスの良い食事と適度な運動の習慣を身に着ける
  *適切な体重を保つ
  *冷え性やお血がある場合は生活改善や漢方で体質改善する
  *日々の生活の中で妊娠「できない」ことにフォーカスしない

日付:2014年2月2日  カテゴリー:日々の雑記

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母乳育児について

 先日いらした患者さんで、考えさせられる症例があったのでシェアさせてくださいね。
 その方は、助産院で出産後に母乳育児を勧められて頑張っていらしたそうですが、両側の乳腺炎になり、切開して膿を出さなければいけないほどひどくなってしまったそうです。痛みが辛くて、授乳はやめ、ミルクにしたら楽になったらしいのですが、その状態でも助産院ではとにかく母乳で頑張れと言われたそうです。
 その患者さんは、しばらく間をあけて2人目を希望されているのですが、次の産後も同じような苦しみを味わうことにとても不安を感じていらっしゃいました。「次は病院で産みたいです」とおっしゃっていましたが、産む場所の選択は自由であること、母乳育児に固執する必要はないこと、産後に母乳が作られないように止める方法もあること、それらは自分にも赤ちゃんにも「悪いこと」ではないこととご説明したら、少し安心してくださいました。
  
 私自身も、2人とも完全母乳で育てています。仕事をしながらの母乳育児は大変ですが、仕事の合間に搾乳して冷凍母乳をストックすれば完全母乳も可能ではあります。そうするのは、母乳育児のメリットをよく理解しているからですが、それと同時に、母乳がとてもよく出て保育園が母乳育児に協力的で私自身が母乳育児を辛いと感じていないからです。
 好条件がそろっているから母乳育児が可能なだけで、ある意味ありがたいことなんですね。母乳育児はすごいことではありますが、それをやっているから「偉い」やっていないから「ダメ」なわけではありません。

 環境や体調によって、母乳育児ができない方もいらっしゃいます。乳がんの術後で、少しでも胸が張ると激痛なので母乳を止めたいとおっしゃった方もいらっしゃいました。どうしても服薬をやめられないので母乳をあきらめたいという方もいらっしゃいます。どんなに頑張っても母乳が十分に出ないという方もいらっしゃいます。
 個人的には、母乳育児はメリットが大きいけれど他人から「強要」されるものではないと考えています。いろいろ工夫することで母乳育児が難しい人も可能になるというのであれば、それは周りがサポートすべきですが、母親本人が希望していないのであれば母乳育児をしないことに対しては誰も何も言及すべきではないんです。

 母乳を作るオキシトシンというホルモンは別名「愛情ホルモン」と言われ、母子愛着形成には欠かせないホルモンです。以前学会で、「母乳をあげないということは愛情不足になるということですか?」という質問が出ました。すると、演者の先生はとても素敵な回答をなさってくださいました。
 確かに、動物では母乳をあげないと愛着形成がきちんとできず子どもをきちんと育てなくなることがあるそうです。ただ、人間は授乳だけではなく、赤ちゃんと目と目で見つめ合うだけでもオキシトシンが分泌されるんだそうです。なので、母乳をあげられなくても、いっぱい見つめ合っていっぱいお話ししてスキンシップをとってくださいとおっしゃってました。

 愛情のそそぎ方は人それぞれです。母乳を一生懸命あげることはもちろんとても愛情深い行為です。でも、それ以外にも、離乳食を手をかけて作ったり、いっぱいスキンシップをしてあげたり、自分なりに「無理なくできる方法」で愛情を注いであげればオッケーなんだと思います。

日付:2014年1月8日  カテゴリー:日々の雑記

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今年もありがとうございました

 昨日、今年最後の診療を終えてクリニックを大掃除しました。

この1年間、クリニックをご利用いただきありがとうございました。

自分の妊娠・出産・産後すぐの復帰と、目まぐるしい1年でしたが、皆様のおかげでこうして穏やかに年を越せることに心から感謝いたします。

新年は1月4日から診療を開始します。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

日付:2013年12月29日  カテゴリー:日々の雑記

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妊娠をハプニングにしないために

  気づけば12月も残り半分…産後は毎日があっという間に過ぎていってしまいますね。
 ブログの更新やメルマガの発行など、もっともっと色んなことを発信していきたいのですが、仕事から帰って二人の娘を寝かせつけたらもう寝る時間になってしまうんですよね。何だか焦ってしまう気持ちもありますが、「今はそういう時期」と割り切ってボチボチ更新していきたいと思っています。
 マイペースな更新に、どうぞお付き合いくださいませ。

 私の妊娠ストーリーをお話しすると、多くの方が「計画的ですね~」とおっしゃいますが、私にとって「妊娠を希望していなければピルを飲んで、妊娠を希望したらちゃんと妊娠を目指す」というのは、ごくごく当たり前のことなんです。
 今妊娠したいのかどうかをきちんと考えて、避妊が必要と判断したら自分の手で避妊をすることは、妊娠を引き受ける立場である「女性」であれば当然すべきことだと考えています。もちろん、「今妊娠したいかどうか」があいまいなケースもあるかもしれません。ただ、個人的には「妊娠したらしたで産んだらいいから」と考えて避妊をおろそかにすることは、いろんな意味で無責任なのではないかなと感じています。

 赤ちゃんが「授かりもの」であると考えることと、妊娠を強く希望していないのに妊娠するかどうかを運に任せることは、微妙に異なるのではないかと思うんですね。よく遭遇するケースがパートナーの「妊娠したら結婚しよう」という言葉を鵜呑みにして避妊を怠ってしまい、実際に妊娠してから後悔するというケースです。もし相手の男性に本気で結婚する気があるのであれば、「妊娠したら」なんてのんきなことは言わずに「すぐに結婚しよう」と言ってくれると思いませんか?
 きちんと「望んで」妊娠するのであれば、結婚と妊娠の順序は多少前後しても問題ありませんが、「妊娠したいかどうか」をはっきりさせられない自分の背中を押してもらうために避妊を怠るのはリスクが伴います。

 すべての子どもに「望まれて」産まれてくる権利があります。
 心から妊娠を希望するまでは、女性が自分の手できちんと避妊できるようにサポートしていくことが、私の役割だと感じています。

日付:2013年12月15日  カテゴリー:日々の雑記

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秋のお肌はお疲れモード

あっという間に産後1ヵ月が経過しました。

おかげさまで、母子ともに1か月健診も全く問題なく、私も普段通りの診療に戻ることができて安心しております。

 

最近急に秋めいてきましたね。

猛暑日から一気に涼しくなって、体調のコントロールがうまくいかない方が増えてしまう時期ですが、お肌もトラブルを起こしやすくなっています。

夏の紫外線のダメージが蓄積していたり、急に空気が乾燥し始めるせいで、かさつきなどのお悩みが増える時期なんですよね。

今日は、エステメニューを新しくするためにフェイシャルエステのモニターになって施術をしていただきました。

妊娠中や産後は何かとお肌トラブルが増えてしまいますが、ホルモンの影響でシミやくすみが増えた気がして気になっていたんです。

施術はアクシダームを使ったメニューで、アスタキサンチンを含むパックをしていただいたんですが、終わった後のお肌があまりにモチモチで思わず何度も触ってしまいました。

しっかり保湿されるので、くすみもとれてお肌全体がトーンアップ。血行が良くなって、目の下のクマも改善しました。

 

季節の変わり目のお肌メンテナンスに、フェイシャルエステを是非ご活用くださいませ。

 

日付:2013年10月1日  カテゴリー:日々の雑記

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無事出産いたしました

いつもクリニックをご利用いただきありがとうございます。

おかげさまで、8月25日の16時50分に元気な女の子を出産いたしました。

皆様のご協力とご理解に深く感謝いたします。

今後の診療枠および担当医につきましては、予約専用電話にお問い合わせいただくか、ホームページ上で随時ご確認いただければ幸いです。

引き続きご不便をおかけしますが、どうかご協力いただければ幸いです。

日付:2013年8月26日  カテゴリー:日々の雑記

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やっと臨月に入りました

 

いつもクリニックをご利用くださってありがとうございます。


おかげさまで無事臨月に入り、出産までカウントダウンとなりました。


出産はいつになるか分からないため、出産に伴う診療時間や診療枠の変更で患者様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をいただければ幸いです。


 


ご利用の患者様にご不便をおかけすることには、大変申し訳ないと感じていますが、個人的には、妊娠・出産のために女性がお仕事をお休みすることを「迷惑」とは考えない社会を目指したいと考えています。


残念ながら、妊娠・出産を「個人の勝手」ととらえてしまう風潮が社会全体や一部の企業にはあるように感じることもしばしばあります。


実際は、妊娠・出産は個人のレベルで抱えるものではなく、社会全体が応援すべき大きな社会貢献であり、未来を作り出す大切なお仕事です。

 


私自身が妊娠・出産・子育てを経験しながら仕事を続けるということを実践してみて、ただ仕事だけをしている時の3倍以上の負担だということを実感しました。逆に言えば、妊娠・出産・子育て中の女性に一般男性と「同じ仕事」をするようにと求めることは、一般男性に仕事量を3倍以上に増やせというようなものなんです。


そういったことをちゃんと理解して、妊娠・出産を控えた女性をサポートする「あたたかい意識」が社会にも企業にも必要だと思います。そして、妊娠・出産をする女性自身は、周りの協力に感謝は必要だけれども「申し訳ない」と思う必要はないということを心にとめて、もっと堂々と胸を張って「母親」になってほしいなと感じています。


日付:2013年8月19日  カテゴリー:日々の雑記

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検診で異常が見つかったら…

 検診を受けて異常が見つかると、多くの患者様は大変ショックを受けてしまわれます。
 何か症状があって検査を受けた場合と異なり、単なる「検診」はご本人が「何も異常があるはずがない」と思って受けていることが多いので、どうしても心の準備が何もない状態で結果を受け取ることになってしまいがちなんですよね。

 でも、本来「検診」は、こういった症状が出る前の初期の異常を見つけることが目的なので、検診で異常が見つかったというのは、ラッキーと言えます。
 「病気が見つかって、なんでラッキーなんだ!」と思われるかもしれませんが、病気というのは心や体からの何らかのメッセージです。それに早く気づいてあげられたということは、心身にとってはラッキーなんですね。

 もし検診を受けていなければ、症状が出るまで、つまり病気がかなり進行するまで気づくことができず、取り返しがつかない段階でやっと見つかったり、大掛かりな治療が必要になっていたかもしれません。
 子宮頸がんの検診で言えば、当院で不正出血などの症状が何もなく検診だけを受けた方で異常が出たケースは、すべて「上皮内がん」以下の病変でした。つまり、経過観察で大丈夫なレベルか円錐切除という簡単な手術のみで完治が可能なレベルまでで見つかっているということです。ちなみに、不正出血やおりものの異常で検査を受けた方の中には、残念ながら浸潤がんの方が数名いらっしゃいました。

 子宮頸がん検診で異常が見つかっても、中等度異形成までなら3か月ごとの細胞診を受けるだけで治療に進む必要はありませんし、万が一病変が進んでも円錐切除までで済みます。高度異形成や上皮内がんであっても、円錐切除をきちんと受ければ、ほぼ完治が可能ですから、子宮を失わずに済みます。
 もちろん、妊娠前の方が円錐切除を受けることによって、将来の不妊症や流産・早産のリスクを作ることにはなりますから、できることなら手術を受けずに済んだ方がいいわけですが、進行がんになってから行う治療に比べれば、負担は非常に少ないと言えます。

 日本人の検診受診率は、残念なことに非常に低く、すべての年代を平均してもわずか20%程度にとどまっています。子宮頸がんが増えている10代や20代の方の受診率はもっと低く、10%以下なんですね。
 中には、異常が見つかるのが怖いから検診を受けない、という方もいらっしゃいますが、それは本末転倒です。毎年検診を受けることによって、異常がなければ「安心」を得ることができますし、異常が見つかってもその異常とどのように付き合っていけばいいのか、早めに注意することができるわけですから、検診はぜひ受けていただきたいなと思います。

日付:2013年6月23日  カテゴリー:日々の雑記

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あなたの主治医はあなた自身

 クリニックには様々なお悩みを抱えた患者様がご相談にいらっしゃるのですが、中には「どの病院でも『異常ない・気のせい』と言われたけれど不調が続く」と訴えて来られる方もいらっしゃいます。
 検査をして異常が見つかる場合もありますし、やはり何も異常がなく症状に合わせてお薬を処方したら状態が改善することもあります。
 でも、何をしても改善しないというケースも実はあるんですね。「ここに来れば治ると思ったのに…」とガッカリされてしまうこともあるのですが、医者は基本的に病気を「治す」ことはできません。

 医者ができることは、検査で現在の状態を客観的に分かるようにお示しし、そこから考えられる体からの「メッセージ」をお伝えすることと、いくつかの治療を提案して「自分の力で健康になる」ことをサポートさせていただくだけなんです。
 薬は症状を抑えてくれますが、あくまで一時的に心身にとって楽な状態を作ることで、メッセージを発している自分自身と向かいやすくするだけで、病気を治しているわけではありません。

 なので「不調が治らない」方には、治らない理由があるわけです。
 多いのは、せっかく心身が「このままではいけませんよ」とメッセージをくれているのに、それに耳を傾けようとしないケースです。この場合、不調を治してしまうとメッセージに気づくことなく悪習慣を続けたり、抱えている問題と向かい合おうとしなかったりしてしまうので、本人の心身にとっては不調がなくなっては困るんですね。だから、メッセージに耳を傾けるまで不調は続きます。
 この場合、不調を「治しきる」ことはご本人のためにならないこともあるので、本当の問題にご本人が気づくまでそっと見守るしかないこともしばしばあります。

 また、不調であり続けることによって「セカンダリーゲイン」がある場合も、何をしても改善しなかったり、いったん今ある不調が改善してもすぐに別の不調が出てくることが多いように思われます。
 セカンダリーゲインというのは、その不調があり続けることによって得られるメリットです。ものすごく単純な例を挙げると、母親になかなかかまってもらえない子どもが病気になると優しくしてもらえたりずっと一緒にいてもらえるので病気であり続けようとする、といったパターンです。
 本人は「健康になりたい」「よくなりたい」と口では言っていても、潜在意識が「病気であり続けたい」と認識しているので、何をしてもよくならないという状態が続きます。
 セカンダリーゲインが病気によってではなく、本来の問題解決方法で得られるものであると分かれば、病気は必要なくなるので不調は治っていきます。

 何をしても不調が良くならない場合は、一度心身からのメッセージを無視していないか、何が自分にとっての「本当の問題」なのか、じっくり見つめ直してみるといいかもしれません。
 自分の体のことを一番よくわかって、きちんとメンテナンスしてくれるのは自分自身です。
 つまり、最高の「主治医」は実は自分自身なんですね。

日付:2013年6月3日  カテゴリー:日々の雑記

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