日々の雑記

子宮頸がんワクチンの安全性

  今日は避妊教育ネットワークの勉強会に参加してきました。他のメンバーの活動報告に刺激を受けたり、ピルによる避妊機序について生理学的に詳しい解説を受けたり、子宮頸がんワクチンの接種がなぜ広まらないのかについて日本の現状の裏話を聞いたり、盛りだくさんの内容でした。
 子宮頸がんワクチンの接種は、公費負担での接種が開始されてからもそれほど希望者が多くなく、「なぜこれほどまでに予防意識が広まらないのだろうか」と懸念していましたが、「積極的接種を推奨しない」との発表後は全くと言っていいほど接種希望者がいらっしゃらなくなりました。
 でも、10代の娘さんを持つお母さまからは時々質問を受けたりします。特に、お母様ご自身が子宮頸部の異形成で定期フォローを受けていらしたりすると、「娘には同じ思いをさせたくない」というお気持ちもあるようです。ワクチン接種を受けさせたいけれど、メディアの報道を見ていると怖くなるという意見が多いため、まずはメディアの報道をどのように受け止めたらよいのかを解説していきたいと思います。

 私自身は、明らかにそうであるというエビデンスのある内容についてはそのエビデンスを優先します。その事実を証明または否定するエビデンスが充分でない時は、「エビデンスがないからそれは間違いだ」とは断定せず、その事実が本当である可能性も考えるようにしています。
 子宮頸がんワクチンに対して「積極的接種を推奨しない」という措置をとらざるを得なくなった背景には、メディア上で報道されているようなけいれんなどの激しい症状を伴う「副反応」が見られるとの指摘を受けたせいです。しかし、実際は、この問題となっている症状とワクチンの因果関係についてははっきりと否定されているのです。学会も、WHOも、明らかな因果関係はないと結論付けているにもかかわらず、まるでワクチンのせいでそのような症状が出てしまっているような取り上げられ方がされているため、一般の方は「ワクチンの副反応であんなふうになってしまうこともあるのか」と誤解をしてしまっても無理はありません。

 どんな薬もそうですが、大人数に使えば一定の割合で「副反応」と呼ばれる症状が出ることがあります。ワクチンの副反応もそうですが、接種後に出た症状が「明らかにワクチンのせいなのか」を見極めるには、いくつかポイントがあるのです。
 1)症状がワクチン接種後のみに見られて接種前には見られない
 2)ワクチンを打っていない人に同じ症状は出ていない
 3)ワクチンの接種以外ことで同じ症状が出ていない
 4)ワクチン接種と症状の出現時期に明らかな因果関係がある
 例えば、ワクチンを接種した数分後に失神するケースはあります。医学的には「迷走神経反射」と呼ばれるもので、一時的に血圧が下がって急に意識を失うものです。ワクチンを接種してすぐに起きるものなので「ワクチン接種のせいでそうなった」と言えますが、実は同じことは採血でも他の注射でも起こりえます。なので、この場合3)の「ワクチン以外のことで同じ症状が出ない」に当てはまりません。つまり、「ワクチンという薬剤の成分」で起こった症状ではなく、「注射という痛み刺激」のせいで起こった症状ということになります。

 子宮頸がんワクチン接種後に起きているとされる、けいれんや歩行ができなくなるなどの多彩な症状は、ワクチンを接種していない人や男性にもみられていること。ワクチン接種が開始される前から、同様の症状を訴える人がいたことなどから、ワクチンの薬剤そのものが影響して引き起こされた症状ではないという結論に至っているのです。
 ワクチン接種後から症状が出た場合に、ワクチン接種という痛みや心理的負担が「引き金」になった可能性は考えられるかと思われます。でも、それは「薬剤」のせいではないわけです。その点が、最も大きな誤解として、一般の方には「副反応だ!」と印象つけられているのではないかと感じました。
 実際、「海外のデータではあてにならない。日本人特有の反応の仕方があるのかもしれない」との指摘を受けて、名古屋市が接種した人としていない人に見られる症状を、正しい統計学的分析をして比較したデータがあります。倦怠感等のいずれの症状もワクチンを接種したグループの方が「わずかに少ない」という結果が出ているとのことです。つまり、「副反応だ」と指摘されている症状は、実際はワクチン接種が関係ない可能性が大きいのです。

日付:2017年10月9日  カテゴリー:子宮頚がん,日々の雑記

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私の副鼻腔炎が一瞬で治ったわけ?!

  子どもたちの風邪をもらってしまったのをきっかけに、副鼻腔炎になり、10日間くらいグズグズと症状が続いていました。症状的には明らかに副鼻腔炎なので、漢方薬や抗生剤で治療していたのですが、何となくすっきりよくなりきらず・・・やっぱり、この症状を引き起こしている背景をちゃんと見ないとダメだなと思っていたのですが。
 実は原因ははっきりしていて、一言で言うと「夫への不満の蓄積」です。鼻は「自己認識」を表現する場所で、副鼻腔炎は「身近な人への不満」を意味しています。まあ、副鼻腔炎になっても全然不思議ではない状態だったわけですよね。なので、この副鼻腔炎を改善するには、夫に不満をぶちまけるしかないと思っていたのです。でも、夫は朝早く出かけて、みんなが寝静まった後に帰宅しますから、そもそも不満をぶつけようがなく、どうしたものかと他の方法を考えていたのですが。

 自分が何気なくとった行動が、ため込んだ不満を一気に解消したようで、一晩で副鼻腔炎の症状がすっかり消えてしまいました。
 私がやったことは、「夫の帰宅時間を気にせず先にお風呂に入って、お気に入りのバスミルクを入れて、パックをしながら、夫が帰宅しても慌ててあがらずそのまま長風呂をし続けた」だけです。どういうことかというと、普段は夫が帰宅したらすぐにお風呂に入れるように、帰宅するかもしれない時間には自分がお風呂に入るのを控えて、夫が入った後に入るようにしていたんですよね。しかも、夫は「香り」が嫌いなので、最後に入浴する時しかアロマ系のバスエッセンスを使わないようにしていました。でもって、自分が入っている途中で夫が帰宅したら、まだ湯船につかっていたくても急いで上がるようにしていたんです。どんだけ気遣いしているんだって感じですよね?(笑)
 それを全部、夫のことはほっといて「自分優先」で行ってみたわけです。夫への気遣いをやめて、とにかく「自分を喜ばせること」を優先してみたところ、副鼻腔炎の症状は全くなくなってしまいました。改善した背景には、自分を労わる=夫をないがしろにする、という間違った法則が自分の中にあったために、自分を犠牲にして夫への不満をためていた、というこれまでの状態が一気に解消したということが挙げられます。
 夫への気遣いをやめることと夫をないがしろにすることはイコールではありません。「私はこうしたいの」と主張して自分の居心地の良さを優先することは、「不満がない状態」を作るのに必要なことだったのです。それを象徴するような行動をとった、つまり、不満をため込まなことを「不満をなくす」より先に具体的な行動で「先取りした」というわけです。夫の行動は全く何も変わっていないわけですから、私の行動を変えるだけで不満がなくなるのか、と思われるかもしれませんが、この「行動の先取り」は今回のようにかなり即効性があるようです。

 この法則は、実は食事療法でも応用ができます。食事への活用方法は、また別の機会に説明していきますね。
 

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日付:2017年10月5日  カテゴリー:日々の雑記

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無痛分娩にトラブルが多い本当の理由

  無痛分娩に関しては、分娩時のトラブルについての報道が相次いだりした影響か、最近はあまり質問されなくなった印象ですが、中には「どうしても陣痛に耐えるのが嫌!」「痛みに弱いので今から陣痛が恐怖」といった理由で無痛分娩を希望する方もいらっしゃいます。個人的にこのような理由で無痛分娩を選択することは、お勧めしていません。それは、色んな意味でご本人にも赤ちゃんにも良い影響が残らない可能性が高いからです。
 
 無痛分娩の医学的リスクは以下のようなものが挙げられます。
  *「産科麻酔」という特殊な麻酔の技術が必要→麻酔によるトラブルが起こりうる
  *麻酔が効きすぎると分娩停止のリスクがある
  *自然な分娩なら必要なかった帝王切開・吸引分娩・鉗子分娩が必要になる可能性がある

 いずれも、技術の高い医師が充分なマンパワーのある病院で万全の態勢で行えば、そのリスクをかなり下げることはできるものですが、これらのリスクを「ゼロ」にはできません。
  
 一方で、無痛分娩のメリットもあります。痛みが少ないおかげで分娩時の心身のダメージが少なく産後の体調の回復が早くなったり、分娩時に赤ちゃんとのやり取りを楽しむ余裕ができたり、といった点が挙げられます。
 ただ、実はこれらのメリットも、無痛分娩でなくても得られるものです。分娩までの様々な心身の「準備」を整えておけば、それほど痛みに苦しむことなく幸せなお産を行うこともできます。
 痛みの感じ方は個人差が大きいと言いますが、本来の姿に戻ることができれば、どんな女性でも陣痛によってダメージは受けないようになっているのです。

 最終的に無痛分娩を選ぶかどうかは、ご本人や家族の意向によると思いますが、無痛分娩にトラブルが多い原因は、実は「なぜ無痛分娩を選ぶのか」の理由によるところが大きいのです。
 心臓の病気などによる医学的適応で無痛分娩を選択するケースを除いて、ほとんどのケースでは「痛みに耐えることが嫌!」「痛みが怖い」という「避けたいものを避ける」目的で、脳が「苦痛を感じて」その選択を行っています。つまり、無痛分娩という選択を行う時点で、自ら苦痛を背負い込みながら嫌なことを避けたいという状態を思い浮かべているわけです。この状態で選択した「無痛分娩」というものが、良い結果をもたらしてくれるはずがありません。

 以前、コンビニのお惣菜が体に悪影響を及ぼすのは、コンビニ食を「選ぶ時の脳の動き」が原因であると書きましたが、実は無痛分娩という選択にも同じことが言えるのです。無痛分娩そのものが悪いわけではありません。なぜ無痛分娩をしたいと思ったのか、その理由がとても重要です。無痛分娩を選ぶ時、自分の頭の中にどんな映像を思い浮かべているかということです。

 もし、どうしても無痛分娩が選びたいけれど、その悪影響が出るのが心配という場合は、まずは「なぜ無痛分娩を選ぶのか」の理由を書き換えていくといいでしょう。
 そして、無痛分娩かどうかはひとまず置いといて、自分にとっての理想のお産とはどのようなものなのか、そこに至るまでにお腹の中の赤ちゃんとどのような関係を築いていきたいのか、その点をもっとしっかりイメージしていくことをお勧めします。
 

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日付:2017年9月29日  カテゴリー:日々の雑記

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なぜストレス発散すればするほど病気になるのか?

  以前も「ストレス」というものが本当は存在しないものだと書きましたが、この世の中には「ストレス」という物質は存在していません。でも、多くの人が「ストレスがたまって」「ストレスフルな生活が続いて」体調不良になっているとか病気になったとおっしゃいます。医学的な解説にも「ストレスをためないようにしましょう」「症状の原因はストレスかもしれません」といったことが書いてあったります。
 実際は「ストレス」だと思っていた何か具体的な「自分のテリトリーを侵害しているもの」があるわけです。例えば「育児がストレス」という人の場合、育児で自分のペースが乱されて自分の思うような時間配分で物事が進められないことが負担に感じている、ということかもしれません。この場合、「子どものペースに自分が振り回されている」という状況を生み出すことで、自分らしい生き方ができなくなっていると感じていることが「ストレス」の正体なわけです。
 
 この「ストレスの正体」をきちんと見ずに、ただ「ストレスがたまっているからパーッと遊びに行こう」「今日はやけ食いだ!」「週末は飲みに行ってストレス発散するぞ」ということを繰り返していると、たとえ自覚的にはストレスが「発散」できていても人は病気になっていきます。
 なぜなら、「ストレス発散」のために行っていることはすべて、それを行えば行うほど「自分はストレスにさらされている~」ということを自分に言い聞かせているようなものだからです。大変な自分・かわいそうな自分・みじめな自分・疲れている自分・・・ストレスにさらされて『本来の姿を失った自分』をストレス発散のたびに再認識してしまうだけなんですね。
 なので、この状態でいくら「ストレス発散」をしても、脳の「苦痛系」という部位が刺激されて、結果としてストレスを感じた時に分泌されるホルモンがたくさん出てしまいます。

 とはいっても、一時的に「たまっているもの」を爆発させることも時には必要だったりします。いわゆる「ガス抜き」というものですね。ただし、これは1回限りです。それを何度も繰り返すことは、上記の理由で何の解決にもなりません。
 問題から目をそらすためにストレス発散しているはずが、実は問題をより強化しているだけになってしまうんですね。だから、ストレス発散のために食べるとぶくぶく太りますし、お酒を飲むと肝臓を傷めますし、買い物をするといらないものばかり買ってしまって「浪費」になってしまうのです。

 自分が「ストレスを感じているな~」と思ったら、それを発散しようとしたり「なかったことにしよう」とするのではなく、まずはその正体を詳細に分析してみることをお勧めします。正体が分かれば、お化けと闘っている状態から脱却できますので、具体的な解決方法が見えてきます。
 そして、「ストレスがあるかどうか」は置いといて、日々何を感じてどのように過ごしたいのかに焦点を当てて行動してみましょう。上記の「育児がストレス」である場合は、子どもと一緒にいる時にどういう感情を感じたりどんな顔で過ごしていたいのかをまず具体化します。そして、どのような環境を整えたりどのような行動をとるとそれが実行できるのかを考えていくのです。さらに、それが「うまくいかない場合」はどういうケースがありうるかを挙げて、そのような状況にさらされた時も「得たい感情」が得られるようにするための具体的な解決策をあらかじめシミュレーションしておくのです。
 こうすることで、脳の「報酬系」という部位が刺激されるようになります。同じ育児をしている時も、苦痛系が刺激され続けるのと報酬系が刺激され続けるのとでは、結果として体に起きてくる反応が全く異なってきます。

 これらの「脳の動かし方の調整」を行ってくれる『薬』はありません。そのため、カウンセリングが有効になってくるのです。
 もし、自分で脳の動かし方を変えるのが難しいなと感じたら、一度カウンセリングを受けてみるとよいかもしれません。
 

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日付:2017年9月28日  カテゴリー:日々の雑記

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「親に感謝」は間違いか?

  二分の一成人式や、父の日・母の日などのイベントで「親に感謝しましょう」と促すことが、虐待を受けている子どもや「親に感謝」が難しい立場にいる子どもを追い詰める、という意見があります。確かに、「感謝する」ことは他人から強要されることではありません。自発的に、自然に湧き上がってくるのが「感謝」という感情だと思います。子どもの時は、その感謝を伝える方法をまだよく知らないから、どのような表現方法があるのかを周りの大人が教えてあげることに意味はあると思います。
 でも、「親に感謝すべき」という考えを押し付けるのは間違いでしょう。介護の現場や、子育ての現場でもよく見られる光景ですが、「親の世話をさせてもらえるなんてありがたいよね」「子どもはすぐ大きくなるから今の時間は貴重な時間だよね」など、他人の価値観を押し付けてしまうことで介護や子育てに疲弊している人に追い打ちをかけてしまうことがあります。これらはすべて、当事者が自発的に発言するものであって、「外野」が言うことではありません。

 では、子どもたちに「感謝」を教えることは間違いなのでしょうか?個人的に「感謝して生きる」という選択もあるよ、ということを教えることは必要だと思います。親や支えてきてくれた人たちに感謝して生きるのも一つの選択だし、悪態をつきながら文句ばかり言って生きるのも一つの選択です。何が正しいというわけでもなく、それらの選択はすべて本人の自由なのです。だから、どういう生き方をしていても「間違っている」というわけではありません。
 診療の現場でも、私はよくこうお伝えします。「根本原因と向き合わず薬で症状を押さえてだましだましいくのもありですし、根っこと向かい合ってスッキリよくなるのもありですし、どちらの生き方を選択してもいいんですよ」と。何を選択するかは本人の自由です。ただ、どのような選択肢があるのか、そしてそれらを選択した先に何があるのかを示しているだけなのです。

 親に感謝をしたくないという人の中には、恨みや怒りを持っていなければ生きる活力がなくなってしまうという人もいるかもしれません。その状態の時には、恨みや怒りが必要なのですから、無理に手放そうとしなくてもよいのです。時が来れば手放したくなるかもしれませんし、一生そのままかもしれません。
 ただ、一つ言えることは、悪態をつきながら「感謝したいこと」を体験するのは難しいということです。よく因果応報の法則といいますが、原因があるから結果が出るのではなく、結果を決めるから原因が発生するのです。例えば、儲かったからお金持ちになるのではなく、お金持ちになると決めたから儲かるわけです。「文句を言い続ける」という選択をしたら、文句を言い続けたくなる毎日がやってきます。「感謝して生きる」と決めたら、感謝したくなるような出来事がやってきます。
 人は、「赤い物を探そう」と思いながら青い物に目を止めることはできません。「恨みつらみ」を思い浮かべながら生きていると、うれしいことや楽しいことが目に入らなくなってしまうのです。

 そのことを理解したうえで、どのように生きるかを選択していけばいいのだと思います。そして、どのような選択肢があるのかを示し、本人の選択を温かく見守ることが、周りの大人ができることなのではないでしょうか。

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日付:2017年8月13日  カテゴリー:日々の雑記

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あなたは「超高性能アラーム」を活用していますか?

  患者様とお話ししていると、「疲れると頭痛が出ます」「ストレスがかかると生理不順になるんです」「寝不足になると血圧が上がります」など、「こういう状況になるとこういう体調不良が出る」というパターンを認識している方も結構いらっしゃいます。
 そんな時は、私はこう思うのです。「おめでとうございます!あなたは他の人にはない『超高性能なアラーム』をお持ちなんですね」と。心身に負荷がかかった時、それが命にかかわるような状態になる前にちゃんとわかりやすい症状としてサインが出てくれるわけですから、これほどありがたいアラームはありません。
 でも、多くの方はこのアラームを「疎ましいもの」と捉えて、何とかしてアラームが鳴ること自体を止めようとします。

 更年期症状が強く出る方には、「女性ホルモンはガソリンと同じです。更年期とい時期は、今後ガソリンが継ぎ足されない状態で約30年間の人生を過ごしていくために、体との付き合い方を探る時期です。これまでフルアクセルで走ってきていて、自分でブレーキを踏むことができない人ほど更年期の症状は出やすくなります。フルアクセルのままだとすぐにガス欠になってしまうからです。更年期症状は、体が『走り方を変えてくださいよ』と優しくブレーキを踏んでくれているから出るんですよ」とご説明しています。
 中には、この話をしただけで涙を流される方もいらっしゃいます。どれだけ自分の体に鞭打ってきたか気づいたり、「誰かにストップと言ってほしい」状態を指摘されて安心されたりするのでしょう。

 例えば、「疲れると頭痛が出る」人が、頭痛が出るたびに「もうまた頭痛!勘弁してよ」と思いながら鎮痛剤で頭痛を抑え込んで何とかしようとすると、頭痛が出るたびに脳の「苦痛系」という部位が刺激されます。これは、そもそも頭痛が起きることを「嫌なこと・避けたいこと」としてとらえているからです。この状態では、アラームがアラームとして機能していません。なので、これを続けているともっと重大な病気につながっていきます。
 逆に、頭痛が起きたときに「あ、また頭痛だ。そういえば最近仕事を抱え込みすぎているな」と、それが「何のサインなのか」を読み取って好ましい状況になるように調整すると、頭痛が起きても脳の「報酬系」という部位が刺激されます。頭痛を「嫌なこと」ではなく「理想の自分からずれた時に元に戻れるようにしてくれるサイン」としてとらえているので、頭痛が起きるたびに「理想の自分に戻ろうとする」という力が働きます。なので、たとえ頭痛が「治っていない」状態でも、重大な病気に発展していかないのです。

 何らかの体調不良が出やすい人は、それだけアラーム機能の感度がよいということです。
 せっかく備わっている「超高性能アラーム」を、あなたは活用できていますか? 

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日付:2017年8月5日  カテゴリー:日々の雑記

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産後うつや虐待を予防する効果的な支援とは

   今日も朝から学会参加です。朝イチのシンポジウムは、どのようにしてサポートが必要な妊婦さんをピックアップして、効果的な支援を行っていくかというテーマでした。母子手帳や問診票、質問紙票をうまく活用して、リスクをスコア化する取り組みや、産後健診などの行政的取り組みなどについて、各立場からのお話があり、色々参考になりました。

 リスクというのは、虐待のリスクです。虐待死の6割以上が0歳の時点で起きているため、産後の母親をどのように支援するかが、虐待死を減らすためにはカギになるというわけです。今回は、産後うつのリスクについては議論の対象になっていませんでしたが、基本的な考え方は同じでしょう。

 産後に継続的なサポートが必要になりそうな妊婦さんを、妊娠中から見つけておくことは、産後1ヶ月健診後も誰がどのように介入するのか、あらかじめ対策を立てる上では重要です。

 でも、シンポジウム全体を通して強く感じたのは、事前にハイリスクとわかるケースばかりではないという点と、どんなに病院や行政が頑張っても24時間365日サポートすることはできないということです。例え区役所に育児相談に行っても、その時は話を聞いてもらえて少しは気分が晴れても、自宅に帰ればウンザリする現実があるわけです。妊婦さん本人だけを見ていても、十分なサポートにはならないのではないかと感じました。

 じゃあどうすればいいのか・・・妊婦さんのごくごく身近にいる支援者を支援&教育することが重要なのです。支援者の一番の候補は、妊婦さんの「夫」です。子どもの「父親」という立場にいる人です。
 両親学級への参加を必須にするとか、妊婦健診に
4回以上同席させるとか、分娩時の立ち会いを勧めるとか、退院前の指導を母親だけでなくて父親も一緒に行うとか、父親をなんちゃってイクメンではなく「父親」として機能できるようにするために行えることはたくさんあります。事前のスコアでハイリスクと分かっている妊婦さんについては、その夫に対する個別指導も重要だと思います。

 父親がいないとか、病気や発達障害などで父親の協力が期待できない場合は、他にキーパーソンを見つけて支援者として教育する必要があるでしょう。家族との繋がりも全くない完全に孤立無援のケースでは、産後46ヶ月の間は、専門の支援者が常駐するシェアハウスに入って頂くなどの対処が必要になると思います。
 シンポジウムの中では「病院も行政もマンパワーには限界があり」といったありきたりな討論がなされていましたが、もっと「日々の生活」に落とし込んだ支援をするには第3者だけが介入してもダメなのです。そして、家族をどのように巻き込んで協力させるかが非常に重要、かつ、マンパワー不足を補うことになるのだと感じました。

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日付:2017年7月17日  カテゴリー:日々の雑記

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「高齢」の呪縛は誰がかけたもの?

  今日は自宅のすぐ近くで学会が開催されているので、受けたいセクションだけをちょこっと受講してきました。自転車で会場と自宅を往復できてしまうので、助かりますね。
 受けてきたのは「NIPTについて今後の課題を議論する」というパネルディスカッションだったのですが、改めて出生前診断や、高齢妊娠について考えたくなる内容でした。NIPTとは無侵襲的出生前遺伝学的検査(Noninvasive prenatal genetic testing)の略で、母体の血液を採取することで、そこにわずかに含まれている胎児の染色体も一緒に採取して異常がないかどうかを調べるという検査です。正確には「胎児の染色体」ではなくて「胎盤」の染色体なので、胎児自身の体に流れている血液の成分が、母体の採血で採取できるわけではありません。

 以前から行われていた「クワトロテスト」や「トリプルマーカー」と比べて検査の精度が高いことから、「新型出生前診断」として話題になったこともありました。現在は、検査を受けられる対象や、検査を行える施設を限定した「臨床研究」という位置づけで、検査の機会が提供されています。要するに、誰でもどこでも受けていい検査ではないですよ、という位置づけなのです。
 NIPTの臨床研究については、「NIPTコンソーシアム」のページをご参照ください。

 シンポジウムの中では、主に検査の精度について、つまり「疑陽性」や「疑陰性」や「判定不能」の結果が出たケースについて発表されていましたが、パネルディスカッションでの議論の中心は「限定的な検査にすべきか広く誰もが受けられる検査にすべきか」といった内容でした。特に印象に残ったのは、「『偽陽性』が出た場合、本来は正常に産まれるはずの命が失われることになる」という指摘でした。検査の精度的に、「本当は異常がないのに陽性と出る」割合がゼロではありません。たとえ頻度は低くても、「間違って」染色体異常ありという結果が出る場合もあるのです。検査を受けて「異常あり」の結果を受けた方の90%以上が妊娠を中断するという選択をなさっていました。つまり、異常があることが分かったけれど妊娠を継続するという選択をする人はほとんどいないのです。だからこそ、「異常がないのに陽性」と出てしまうことは大きな問題と言えるでしょう。
 検査を受けた人の「なぜ検査を受けたか」の理由の9割以上は「高齢妊娠だから」というものでした。年齢とともに染色体異常のリスクは上がります。なので、染色体異常がないかどうかをあらかじめ調べておきたいという理由で検査を受けるという方がいらっしゃいます。検査を受けた方がいいかどうかは、事前の遺伝カウンセリングをきちんと受けて、「万が一異常が出た場合にどうするのか」も含めて夫婦でしっかり話し合ってから個々に決めることです。医師も含めて、当事者以外が「受けた方がいい」「受けない方がいい」ということを示すべきではありません。検査を受けることによって「知らないでいる権利」を一部放棄することになる、ということも含めて、当事者が選択することなのだと思います。

 ただ、検査理由のほとんどが「高齢妊娠」であること、そして、年齢を理由に受けた人の9割は正常であるという結果であることを合わせて考えると、「年齢」の捉え方を考え直すべきではないのかと改めて感じました。
 高齢妊娠した方や、高齢で妊娠を目指す方は、ぜひ下記の質問の答えをしっかり導いてほしいと思います。

  「あなたはなぜその年齢まで妊娠しないという選択をしてきたのですか?」

 人によっては「仕事に夢中になっていたら40過ぎていた」「たまたまパートナーが見つからなかった」「病気の治療をしていたらこの年になった」「今まで結婚する気にならなかった」「なんとなくこの年になってしまった」などなど、どちらかというと積極的理由で妊娠する年齢を引き上げたわけではないという方もいらっしゃるでしょう。というか、「好きでこの年になったんじゃないわよ」という方がほとんどかもしれません。 
 それでもあえて、この質問に答えることに意味があるのです。「なぜわざわざ今の年齢で妊娠した(妊娠を目指した)か?」です。

 高齢であることを気にする方のほとんどが、「この年まで妊娠しなかった」ことに罪悪感や後悔など、何らかのネガティブな解釈を持っていることがほとんどです。
 妊娠を目指したい理由を書いてもらっても「年も年なので・・・」という方は非常に多くいらっしゃいます。年齢を気にして出生前診断を受ける場合も、ベースは同じ思考回路が働いている可能性が高いのです。

 私たち産婦人科医にとっては、年齢と妊娠率や、高齢妊娠のリスクについて正確な情報を提供することも大切なお仕事のひとつです。なので、年齢について色々語ってしまいますが、それらの情報は10代や20代の方たちに「今のうちに知っておいて!今なら間に合うから!」ということで伝えているのです。高齢妊娠の方や高齢で妊娠を目指す方に対して「その年齢まで妊娠しなかったこと」を後悔させたりそれを責めたりしているわけではありません。
 高齢妊娠だから何かあったらどうしよう・・・という思いで出生前検査を検討するなら、検査をしない方がよいと言えます。今の年齢まで妊娠をしないという選択をした理由をきちんと考え、「これからの妊婦生活をより安心できるものにしたいから」という理由で受けるのなら、検査の意味があるでしょう。

 あなたはまだ「年齢の呪縛」を大事に持ち続けますか?それとも、上記の質問にサクッと答えて、さっさと手放しますか?
 
 

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日付:2017年7月16日  カテゴリー:不妊症,日々の雑記

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女性アスリートのサポートは10代こそ重要なワケ

 女性アスリートをサポートする時に気を付けなければいけない点、つまり女性アスリートに起きやすい医学的トラブルは次の3つだと指摘されています。
  *低栄養(低体重)
  *骨密度低下(とそれに伴う骨折)
  *無月経
 
 これらを女性アスリートの3主徴と言いますが、一つ一つが独立した問題ではなく、低栄養だから骨密度が下がり、体重が減りすぎて無月経にもなり、無月経のせいでホルモン不足になって骨密度が下がりやすくなり・・・と、3つの状態がループを描くようにお互い関連し合っているのです。
 特に「骨」の問題は、医学的介入するタイミングを逃すと、十分な回復の機会を失ってしまうことになりかねないので、早期にその兆候に気付いて適切な治療や改善を行っていくことが重要です。無月経にともなう女性ホルモン不足は、骨密度の低下を引き起こしますが、それに対して10代のうちにホルモンを補えば骨密度はある程度回復しますが、20代になってからホルモンを補っても骨密度があまり変わらないというデータがあります。また、アスリートに限らず、何らかの影響で無月経になってしまった場合の骨密度の下がり具合は、10代のまだ骨量がピークを迎える前に無月経になった場合は明らかに骨密度に影響が出ますが、20歳以降に無月経になった場合は骨密度はあまり下がらないというデータもあります。
 つまり、骨密度がピークを迎える18歳くらいまでの間に女性ホルモン不足の状態が続くと骨密度に影響が出やすいから、10代の無月経や骨密度低下には早めにホルモン補充などの治療的介入が必要ですよ、ということです。

 個人的には、10代のうちは月経不順になる方も多く、また自分の体との付き合い方も十分に把握できておらず、コーチに言われるがままにハードなトレーニングや減量を行ってしまうリスクも高いのではないかと感じています。また、コーチの性別にもよりますが、月経不順や無月経になってもコーチに言わずにいる(言い出せない)というアスリートも多いというデータがありますから、いかに指導する側が正しい知識を持ってアスリートのヘルスケアを行うかということが重要になります。
 私は、自分の経歴的にダンサーの方を拝見することも多々ありますが、特にバレエダンサーに「医学的適正体重」を示すだけではサポートにはなりません。医学的許容範囲と、本人が美容的に、そしてトーで立った時の足首の負荷的に許容できる範囲を探って適切な栄養指導を行っていくことが重要なのだと感じています。

 低用量ピルや超低用量ピルは、ホルモン補充の目的でも月経日のコントロールの目的でも活用できて、しかもドーピングには引っかからない薬剤になっていますから、本来はもっと女性アスリートの方に活用していただきたいものなのですが、まだまだ日本人のアスリートにピルの活用は浸透していないようです。
 若年者のアスリートやダンサーの指導に当たる方へのアドバイスも行っております。ご希望の方は、クリニックにお問い合わせくださいませ。
  045-440-5567  info@be-proud-07.sakura.ne.jp

日付:2017年7月13日  カテゴリー:日々の雑記

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薬を「どのような意識」で使うかが重要なワケ

 クリニックの問診票には、「どのような治療をご希望ですか?」という質問も書いてあります。また、何か治療が必要と思われた時は、標準医療としての選択肢をお示しして「ご自身がどうしたいというご希望がありますか?」と質問するようにしています。
 これは、「すべて先生にお任せします」という、受け身な姿勢を作らないためです。上記の質問をしても「よくわからないのでお任せします」と言われてしまうこともしばしばありますが、現状と治療のメリット&デメリットを総合的に考えて、まずこういう方法をとるのがいいと思われますがどうしますか?、と食い下がります。最終的に、患者様が「自分で」治療法を決めるということがとても重要だからです。

 人によっては「できるだけ薬を使いたくない」「薬に頼るのは嫌だ」という方もいらっしゃいます。ネット情報でも、薬の副作用が色々書いてありますし、「抗がん剤のせいで寿命が縮む」といった内容も散見されます。
 でも、同じ薬を使っても、副作用が強く出て効果が感じられない方もいらっしゃれば、副作用は全くなく劇的に症状が改善する方もいらっしゃいます。この差は何なのだと思いますか?

 実は「薬」そのものが悪いのではないのです。前回の記事の、コンビニの食品そのものが悪いのではないのと一緒で、その薬をどういう意識又は目的で使うかがカギなのです。
 多くの場合、薬を用いる時は「辛い症状を緩和させたい」「これを使わなければもっとひどくなるかもしれない(という不安)」など、何か「避けたいことを避ける」目的で使ってしまいがちです。また、「医者に勧められたから」「ほかに選択肢がないから」「やめたら死ぬかもしれないから」など、受け身又は依存的理由で使う方も少なくありません。
 これらは、問題回避行動で受け身なのでうまくいかないパターンなのです。

 例えば、ピルを使う場合も「受験があるからそれが終わるまでは月経をコントロールしておきたい」「数年後に妊娠を希望しているから今のうちに整えておきたい」など、未来にある何らかの目標に向かって、自ら薬を「活用する」という意識で使う場合は良い結果が得られます。
 私も長年ピルを服用していますが、月経を自らの意思でコントロールする=自分の人生に対して主導権を握る、ために服用しているので、副作用は全くありませんし月経を好きな時に来させているのでとても快適です。
 
 このように、薬を「どのような意識で使うか」はその副作用や効果の出かたに影響します。
 あなたは、問題回避や受け身な立場で薬を飲んでいませんか?もし、その薬を「やめたいのに…」と思いながら仕方なく飲み続けているのだとしたら、早くやめる方法を選んだ方が賢明です。
 クリニックのカウンセリングでは、こういった「本当はやめたい薬」をやめるお手伝いもさせていただいています。

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日付:2017年7月8日  カテゴリー:日々の雑記

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